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『メビウスの輪』vol.14 山口祐三 第3話

081225_013020~Sorry~


あの日からだ。


「本当の家族じゃない」

そう、知った日から。

僕は思った事を、伝えたい事を言葉にできなくなった。

かわりに、もう一人の僕が出て来た。


まただ。またやってしまったんだ。

全員の目が僕に向けられている。


聞こえてはいるんだけど話しているのは僕じゃない。

彼だ。

『ソーリー。』

もう一人の僕。

彼のしゃべる言葉は日本語でも英語でもなく、感情。

僕の感情。

感じているのは僕。

しゃべっているのはソーリー。

すこしの感情の浮き沈みを意味不明な言語で伝えようとする

「誰も理解できない」

母さんが出て行った日から突如現われた。

どっちが本物の僕?


本物の家族?

偽物の家族?

コカコーラ?

ドンキのコーラ?


何が本物?

僕の父さんはほかの人。だから、偽物の家族?

ドンキのコーラはフィギアがついていない。だから偽物のコーラ?

感じる僕。

しゃべる僕。

どっちが本物?

僕は、父さんの事が好きだった。兄さんの事を褒めてる父さん。僕も父さに褒められたかった。

僕は、兄さんを尊敬していた。何でも器用にこなす兄さん。兄さんのようになりたかった。

僕は姉さんの笑顔が好きだった。あと、姉さんのくれるドンキのコーラも。


母さん、僕は‥‥

あの日、母さんが僕に

「ごめんね。」

と告げていなくなったクリスマスのあの日。

僕の10才の誕生日だった。

母さん、僕は‥。

「ごめんね」よりも「愛してる」と言って欲しかった。


次回はvol.15
音有勇の物語第三話
「手袋」 です。

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