『メビウスの輪』vol.14 山口祐三 第3話
~Sorry~
あの日からだ。
「本当の家族じゃない」
そう、知った日から。
僕は思った事を、伝えたい事を言葉にできなくなった。
かわりに、もう一人の僕が出て来た。
まただ。またやってしまったんだ。
全員の目が僕に向けられている。
聞こえてはいるんだけど話しているのは僕じゃない。
彼だ。
『ソーリー。』
もう一人の僕。
彼のしゃべる言葉は日本語でも英語でもなく、感情。
僕の感情。
感じているのは僕。
しゃべっているのはソーリー。
すこしの感情の浮き沈みを意味不明な言語で伝えようとする
「誰も理解できない」
母さんが出て行った日から突如現われた。
どっちが本物の僕?
本物の家族?
偽物の家族?
コカコーラ?
ドンキのコーラ?
何が本物?
僕の父さんはほかの人。だから、偽物の家族?
ドンキのコーラはフィギアがついていない。だから偽物のコーラ?
感じる僕。
しゃべる僕。
どっちが本物?
僕は、父さんの事が好きだった。兄さんの事を褒めてる父さん。僕も父さに褒められたかった。
僕は、兄さんを尊敬していた。何でも器用にこなす兄さん。兄さんのようになりたかった。
僕は姉さんの笑顔が好きだった。あと、姉さんのくれるドンキのコーラも。
母さん、僕は‥‥
あの日、母さんが僕に
「ごめんね。」
と告げていなくなったクリスマスのあの日。
僕の10才の誕生日だった。
母さん、僕は‥。
「ごめんね」よりも「愛してる」と言って欲しかった。
次回はvol.15
音有勇の物語第三話
「手袋」 です。
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