vol.17 『メビウスの輪』吉永百合 第4話

〜ヤング寺岡69〜
17歳の夏‥
ハイスクールララバイを楽しみにしていたものの、主婦業をこなす私には学校帰りのマックなど夢のまた夢だった‥
ある日いつものように帰り道に祐三の施設に行くと
『すいません。いきなり走ってどこかに‥』
祐三がなついていた藤木直人先生がそう言った。
直人と私は探し回った。
しかし祐三は見つからない。
まず家に帰ってダディに言わなきゃ。
お兄にも言ったら帰ってきてくれるかも‥
色々な事を考えながらダッシュで家に帰った。
すると中から聞いた事のない笑い声が聞こえてきた。
誰??
慌ててリビングのドアを開けると‥
そこには見た事のない顔で声で笑う祐三がいた。
『心配したんだよ!!ばかっ!!』
祐三を思わず叩くと
『ぎゃっはっはっはっ』
祐三の笑いは止まらない。
『シスターシスターコレアルよコレアルバッチョフバッチョフ』
何を言っているかと言うと
『姉ちゃん姉ちゃんこれ!お笑い番組これ見たくて帰ってきちゃった』
先週一緒に見ていた『爆笑しまSHOW』
だった。
夕方10分間ヤング寺岡69が一人ですべりまくる視聴率1%以下の番組だ。
見ていて不快感すら感じるひどいネタだ。
しかし祐三は此見よがしに笑い悶えている。
祐三が好きならそれで良いや。
こんなに笑っている祐三を見たのは何年ぶりだろう。
抱腹絶倒。
まさにそんな言葉がぴったりだ。
藤木直人先生に
『祐三くんも変わってかたんだ。百合ちゃんも変わらなきゃ』
そう言ってデートに誘われた。
まぁまぁ長身(180cm)でまぁまぁのフェイス(目が大きくて鼻が高くアゴのラインはすっきり)どこにでもいそうなモデル?(メンズノンノの表紙系)だったが
暇なので付き合ってあげた。
六本木ヒルズでランチをして映画を見て東京タワーに登った。
どこか晴れない気持ちだった。
モヤモヤは私の中でどんどん膨らんでゆく。
理由も分からないまま東京タワーについた。
展望室に着くなりあるものが目に入った。
肩に手を回して来た藤木直人先生の手を振り払いそこに行くと‥
展望室の中で誰にも見られていないのに
ネタを続けるヤング寺岡69がそこにいた。
私は足に根が生えた様にそこに立ち尽くした。
『どうしたの?行こうか』
そう言った藤木直人先生の顔がへのへのもへじに見えた。
ヤング寺岡69は私が来る前も来た後も変わる事なくハイテンションでネタを続けていた。
気付くと私は恋に落ちていた‥。
いや初めから落ちていたのかも知れない。
そうTVの中で初めて見たあの日からわたしも祐三のように‥
この出会いが私と祐三を大きく変えるとは
この時はまだ知る由もなかった。
次はvol.16音無誠『ちょっちゅね〜』
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